ファンコミプラスTOP > イベント > 元祖ネイティブアド:All About創業メンバーが語る「国語・算数・理科・社会」新規事業発想法(1/3)

元祖ネイティブアド:All About創業メンバーが語る「国語・算数・理科・社会」新規事業発想法(1/3)

1 2 3

fanevent20160628_1

株式会社インキュベータ(旧:石川明事務所)
代表取締役
石川 明氏

1988年に株式会社リクルートへ入社。新規事業開発室のマネージャとして約7年、現在の「ホットペッパー」につながるエリア情報誌など1000件以上の新規事業に携わり、数多くの社内起業や起業促進のための制度設計・運用を行った。リクルート退職後の2000年には、株式会社All Aboutを起業。以降10年にわたり、事業責任者を務める(2005年にJASDAQ上場)。そして2010年に独立。さまざまな業種の企業と契約し、新規事業インキュベーターとして企画や企業内起業活性化のための制度設計・社員教育に従事している。
著書に「はじめての社内起業/考え方・動き方・通し方 実践ノウハウ」がある。

All Aboutの立ち上げに見るマーケティング戦略

はじめに~新規事業支援キャリアについて~

私は今、“新規事業インキュベーター”を名乗って仕事をしています。いろんな企業の新規事業開発支援が主なミッションです。こだわっているのは、ボトムアップで新規事業を起こしていくというやり方。というのも、私がバブル真っ盛りの1988年に入社したリクルートが、まさにボトムアップで新規事業を立ち上げる会社だったんですね。今では数百億円の売上を稼ぐようになった『ゼクシィ』も、僕と同期の女性が26~27歳くらいの頃に立ち上げたものです。

リクルートでは新規事業を1000案件以上見てきましたが、人の世話をしているだけではつまらないと思うようになってきて、All About立ち上げの話が出たときに「自分でやりたい」と手を挙げました。そして2000年に創業メンバーとしてリクルートから出向し総勢7名で立ち上げて、今でいうところの「ネイティブアド」にこだわってやってきました。これらの経験から、今回は大きく2つ、ネイティブアドにこだわってやってきた背景と、新規事業を起こす際に大事な考え方について、自分なりの着眼点でご紹介できればと思います。

エディトリアル広告を中心に据えた理由

私がいた頃のAll Aboutにはバナー広告やテキスト広告などのさまざまな商品がありましたが、中核を成していたのはエディトリアル広告です。売上の7割を記事風広告(今でいうネイティブアド)が占めていました。当時私たちがなぜ記事風広告を中心に据えたのか――。まずは、3C分析の観点からご紹介していきたいと思います。

まず「Customer(カスタマー)」の視点からいうと、日本はアメリカと比べてネット広告の市場が小さかったんです。アメリカでは結構な規模があったので乱暴にバナー広告を回していても収益が取れたのですが、日本でそのやり方をしても儲かりそうにない。もうちょっと手をかけないといけない、というのが最初に考えたことでした。

当時は「とりあえずネット広告を出してみよう」というお客さんが多かったのですが、ネット広告に対するリテラシーが上がってくることは予測できました。そして、バナーやテキストとは違う用途で広告を使いたい広告主が増えてくるだろうとも思っていました。まだ一流企業があまりネット広告を使っていない時代でしたが、そのうちブランド力のある広告主が出てくるのも目に見えていました。

続いては「Competitor(競合)」 の視点です。当時はYahoo!さんが圧倒的で、「リーチを取るのにYahoo!を使わないなんてあり得ない」という状況でした。ただ、専門家が気合いを入れて記事を書くAll Aboutは「1つ読むだけでおなかいっぱい」という感じ。リーチを伸ばしたりPVを上げたりするのは難しいのでは、と考えていました。

競合と比較しての強みは、テーマごとに「ガイド」と呼ばれる専門家を据えたこと。180人からスタートして早い段階で400人程度に増やし、私が辞めるときで800人くらいはいました。それから読者の質。当時は例えば401k(確定拠出年金)をテーマにした記事が人気でしたが、これは他のサイトでは考えにくいことだと思います。あんな硬い記事を真面目に読んでくれている方の質が、低いわけがない。なので、閲読態度もきっといいに違いないと思っていました。

最後は 「Company(自社)」の視点から。All Aboutはストック系読み物が中心で、コンテンツの質には自信を持っていました。ただ、固定費が高かったんですね。ガイドさんも編集者もたくさんいたので、普通に広告を売るだけだと固定費が安いサイトに勝てないんです。でも読者の質は高いし、そのユーザーを離さないコンテンツがある。そこを強みにやっていこうと思っていました。

また、資本金が大きかったことも自社の強みでした。メディアは損益分岐点を超えるまでにかなり時間がかかります。ユーザーを集め、信頼を得て、ブランドを得て、そこからやっと広告がついてくるというのが一般的だったので、それまでは我慢の日々でしたね。結構なお金を用意してスタートしたのですが、あと2ヶ月くらい単月黒字が遅かったら倒産していたと思います(笑)。資本金がもっと少なかったら、ここまで成長できなかったかもしれません。

従来の広告とは異なる?“伝える広告”という立ち位置

続いては、STP分析の観点からお話をしていきます。まずは「Segmentation(セグメンテーション)」。私たちはバナー広告やテキスト広告とは違うマーケットで勝負をしようと決めました。そしてさらに、Yahoo!さんのような既存の大手ポータルサイトとは違う土俵で戦うことにしました。

次は「Targeting(ターゲティング)」。読者の年齢層は30代後半~40代くらいで、高収入・高学歴の方を対象にしました。「40代が読むメディア」と言っても今は驚かないかもしれませんが、当時は若い方向けのメディアが多かった時代です。また広告自体にも特徴があり、高額の商品や説明をしないと売れない商品、あるライフステージに来ると検討する商品――例えば住宅や資格系、医療系、高齢者向け、ニッチな商品――などは実際に受けが良かったですね。

そして最後が「Positioning(ポジショニング)」です。当時のネット広告は、「クリエイティブ重視タイプ」と「トラフィック重視タイプ」に二分されました。クリエイティブを重視した“見せる広告”。とアフィリエイトやリスティング、サーチワードなど “集める広告”です。私たちAll Aboutは、これらの広告とは違う「第三軸の広告」であると考えていました。

記事風広告は、コミュニケーションを重視する、言わば“伝える広告”です。当時の広告代理店に、バナーやリスティングとは別に「All Aboutの記事風広告がある」という売り方をしてもらえたのは結構大きかったと思います。これによって、「リーチを取るならYahoo!だけど、もっと説明したいならAll About」という立ち位置を取ることができたわけですから。

次のページへ新規事業を成功させる「国語・算数・理科・社会」メソッド

1 2 3