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元祖ネイティブアド:All About創業メンバーが語る「国語・算数・理科・社会」新規事業発想法(2/3)

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新規事業を成功させる「国語・算数・理科・社会」メソッド

バナー広告、アドネットワーク、Googleとの戦い

とはいえ、記事風広告の販売ではかなり苦戦をしました。企業の自社サイトとの戦い(初期の頃は自社サイトを立ち上げたら広告費を払わなくて済むという感覚の方が結構いた)、バナー広告との戦い(代理店にうまく提案してもらえない)、雑誌広告との戦い(マス広告からシェアを取ってこなければならない)、アドネットワークとの戦い(入ったら広告費が高い理由を説明できなくなる)といったように、上場するまでいろいろなものと戦ってきました。そして、どうにか生き残ってきたという感じです。

一番大きかったのは、Googleとの戦いですね。実はAll Aboutは当初、リンク集サイトとして機能していました。私がAll Aboutの事業計画を作った当時はまだ日本にGoogleがなく、検索エンジンは精度が悪くて検索しても出てくるのはイマイチなサイトばかりだったためです。これなら検索するより誰か詳しい人に聞いたほうが早いだろう、ということで誕生したのがAll Aboutでした。

各ジャンルの専門家であるガイドさんに苦労して探してもらっただけあって、とてもいいリンク集になりました。ですが、そんなときにGoogleが日本にやってきて、使ってみたらめちゃくちゃ便利だった(笑)。そういった事情もあって急遽リンク集はメインコンテンツではなくなり、左端に寄せることになりました。

Googleはどんどん便利になっていくので、「彼らにできないことは何か」ということばかり考えていました。会社が掲げていた当時の社是は「システムではなく人間」。人間にしかできないこと、人間にどこまでのことができるのか、ということを追求していたんです。「記事を書くことはGoogleにはできないよね」ということで、そこからAll Aboutは、記事サイトとしての歩みを進めることになります。

「戦い」は社内にもありました。記事風広告は営業に手間がかかるんです。広告主に対して、「商品の強みはなんですか?」「何を訴求したいですか?」「どんな読者に伝えたいですか?」などとヒアリングしなくてはいけません。もちろん受注後も大変です。「いつ取材できますか?」「いつ撮影できますか?」「この素材はありませんか?」。手間がかかるので、営業スタッフと制作スタッフにかかる負担が大きいんですよね。

手離れが悪いし、効率も悪いし、収益率も低い。そんな記事風広告になぜこだわり続けたのか。そこには自分なりのこだわりがあるのですが、リクルートの中で新規事業計画を1000件以上も見ていると、良い事業案とイマイチな事業案がなんとなく分かってきたんです。その経験を踏まえて見つけたのが、「国語・算数・理科・社会」メソッドです。

ビジネスチャンスを探すことは世の中にある「不」を探すこと

私は、事業とは「不」の解消であると考えています。リクルートの社内会議では、「誰が『不』を抱えているの?」「その場合、何が『不』なの?」という言葉がよく出てきます。不平、不満、不便、不利、不都合、不幸。嫌な言葉ばかりですが、「不」を解消するサービスには誰かがお金を払ってくれるんですよね。ビジネスモデルを考えるのはその後。まず考えるべきは「どんな『不』に対して自分たちがどう寄与し、それをどんな状態に変えていくのか」で、これがビジネスプランニングだと思っています。

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ビジネスチャンスを探すということは、世の中にある「不」を探すということです。皆さんも日々不満を感じていませんか?そういうのも全部チャンスだと思うんですよね。その「不」を探してビジネスにつなげるための思考法が、「国語・算数・理科・社会」メソッドです。この順番がすごく大事。1時間目は必ず国語でなければなりませんし、2時間目は算数、3時間目は理科、4時間目は社会でなければなりません。

1時間目:国語=「不」を洗い出す

国語のテストでは、例えば物語の一部を読んで「主人公はなぜ突然泣き出したのでしょう?」という問いに答えます。答えが文章内になければ、行間を読んで考えますよね。「悔しかったんじゃないか」とか「恥ずかしかったんじゃないか」とか。主人公や作者がどんな気持ちでいるのかを類推する、そのトレーニングが国語の授業だったのではないかと思います。私は、これがマーケティングの原点だと思うんです。

「読者はより良い情報を求めている」というと曖昧ですが、「より良い」にもいろいろありますよね。「より分かりやすい」かもしれないし、「よりマニアック」「より新しい」かもしれない。ここを掘り下げないとメディアの特性が生まれません。All Aboutがやるべきは、ユーザーがどんな「不」を抱え、それをどうやって解消していくのかを追求することでした。まず、広告主・広告代理店・読者が抱える「不」を洗い出すのが国語です。

2時間目:算数=「不」の大きさを確認する

算数では、その「不」が大きいのか小さいのかを測ります。「こういうことを言っている会社が多い」「こういう課題を抱えている代理店が多い」というのを、算数で裏付けしないといけない。その「不」を抱えた人がどれだけいるか(広さ)、その「不」はどの程度生じるのか(頻度)、その「不」はどれくらい深刻なのか(深さ)、という3つの掛け算で「不」の大きさが分かります。そうすれば、「これはビジネスになる(ならない)」という判断ができるようになります。

「高齢者は20XX年に何千万人になると言われている」「○○マーケットは今や3000億円となっていて」といったように、世の中のほとんどの事業企画書に最初に出てくるのは算数です。ただ、算数から事業が生まれることはまずありません。国語で「不」を洗い出し、その「不」がどれくらいの大きさなのかを算数的に考えるという流れがすごく大事なんです。

3時間目:理科=「不」が生じる構造や理由を解き明かす

その次に来るのが、理科。理科は、その事象が生じている構造や理由を解き明かす科目です。なぜ「不」が生じているのかが分からずにソリューションを考え始めると、的外れになってしまいます。なぜこんな「不」が生じてしまったのか……を掘り下げることが、とても大切なのです。

このステップを経ないままいきなり試作品に入ってしまったり、リーンスタートアップだとか言ったりしても、私は違うと思っています。分析が甘いと、凡庸な製品・サービスにしかなりません。

4時間目:社会=「不」が解消されない社会的背景を探る

そして最後は社会です。ちょっと考えれば「不」が生じた理由は分かるし、理由が分かればソリューションなんてすぐ思いつくもの。ですが、「不」があるということは、その後ろに「不」が解消されないまま残っている社会的背景が何かあるはずなんです。その背景や影響を押さえずいきなりソリューションに入ってしまうと、同じ轍を踏んでしまう可能性が高くなります。

例えば、「こういう法律がある」「今の為替の状態だとこうだ」「社会的習慣としてそれは難しい」「技術的に実現しにくい」といったように、「不」が解消されずそのまま残ってしまっている社会的背景を押さえます。既存の製品・サービスではなぜ解消されないのかまで押さえておくことで、適切なソリューションが出てくると思っています。

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