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元祖ネイティブアド:All About創業メンバーが語る「国語・算数・理科・社会」新規事業発想法(3/3)

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新規事業開発の考え方と軸にすべきポリシーとは

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顧客の「不」に向き合った4つの商品

当時の記事風広告の主力商品には、「タイアップ広告」「特集タイアップ広告」「ブランドサイト」「スポンサードサイト」という4種類がありました。メインを占めていたのはタイアップ広告です。All Aboutの中にはガイドさんが書く専門記事がたくさんあるので、それらと横並びで記事風広告を並べるわけです。

特集タイアップ広告では、例えば「梅雨対策」という特集を組んでガイドさんに告知します。ファッション分野のガイドさんはファッションの観点から、住宅分野のガイドさんは住宅の観点から、というようにいろいろなガイドさんが梅雨についての記事を書きます。そこに対して記事風広告をつけるという商品です。

ブランドサイト広告は、簡単に言えばオールアバウトの中に広告主のブランドのコーナーをオールアバウトのサイト体裁で丸ごと作っちゃおうという企画です。私が気に入っていたのは「All About・ヴィッツ」。トヨタのヴィッツですね。他のテーマと同じ体裁なのですが、ヴィッツのことばかり書いてあるコーナーを作ってしまうんです。これも、エディトリアル広告の一部です。

最後は、スポンサードサイト。当時は800あるテーマ毎にその道の専門家を「ガイド」として置いていましたが、そのうちの一つのテーマを企業に「ガイド役」を担っていただいてサイトを運営していただこう、というものです。代表例は「All About・二世帯住宅」。このサイトのガイドさんは、旭化成へーベルハウスの方でした。ですが、普通のガイドサイトなので企業のPRは一切してはいけません。私たちはあくまで、「二世帯住宅について専門家として記事を書いてほしい」とお願いしました。記事を通じて、ユーザーに「どうやら旭化成が二世帯住宅に一番詳しいようだ」と思ってもらう、ブランディング効果を狙ったものです。

「国・算・理・社」の4項目で見る開発の経緯

「特集タイアップ広告」「ブランドサイト広告」「スポンサードサイト広告」に関して、それぞれの商品を作った理由を、「国・算・理・社」に照らし合わせて解説していきたいと思います。

特集タイアップ広告の「国・算・理・社」
・国語……ニッチで検索してもらえない、キーワードが高すぎたり競合が激しく広告の出しどころがない
・算数……季節ごとにいろいろな特集が組めるので数字的に影響が大きい
・理科……人気の検索ワードは価格が高い、特集を組もうとするとコストがかかる
・社会……特集を組めるようなコンテンツ力を持つサイト(メディア)が少ない
ブランドサイト広告の「国・算・理・社」
・国語……公式サイトでは情報が一般的になりやすく十分な情報発信ができない
・算数……自社でブランド別にオリジナルでサイトを作ることは多い
・理科……公式サイトではコンプライアンス上の制限が多い
・社会……ネットらしい面白い情報があふれたコントロール可能な外部サイトがない
スポンサードサイト広告の「国・算・理・社」
・国語……バナー広告ではブランディングができない、自社サイトは強みが手前味噌になってしまう
・算数……商品ではなくテーマで情報収集したいニーズは多い
・理科……小さな広告枠ではこだわりや専門性が伝わりきらない、商品のPRだけをしていてもユーザーとの接点が持てない
・社会……商品ではなくテーマで啓蒙や情報発信できる場がない

私は、お客さんの「不」に向き合うことが原点じゃないかなと思います。まず、何が「不」なのかをできるだけ深く掘り下げる。そしてその「不」が分かったら、大きさを測り間違えないように分析し、なぜその「不」が生じているのかという理由をしっかり考えなければなりません。そして、「不」が解消されていない背景を考えながら、その「不」を解消できる方法を探す――。これが、私がお伝えした「国語・算数・理科・社会」メソッドです。

これはネット広告だけの世界だけでなく、おそらく他のことにも応用が利くだろうと思います。

汗をかくべきポイントを正しく見極める

「国語・算数・理科・社会」メソッド以外に、新規事業開発で大切にしていることをお伝えします。まずは「自社の強みを忘れないこと」が一番だと思いますが、それとは別に2つあります。

1つが、「汗をかくべきポイントを正しく見極めること」です。苦労せず楽に回せるものは、よほど自社しか持ち得ない特性を生かしたものでもなければきっと儲かりません。
オールアバウトにも様々な苦労がありました。せっかく受注した広告キャンペーンがガイドさんに「ここのペットフードに入っている素材の一つが犬に悪いというのが私の持論だから、ここの広告には出られない」と言われたら、全部アウトになってしまいます。ガイドの方々はそれぞれの道のプロだけにこだわりも強いんですよね。そのこだわりに応えつつ、広告の仕事とバランスをとるのは営業スタッフの頑張りどころでした。

最初にAll About立ち上げのアイデアを聞いたとき、それぞれに一家言ある専門家を何百人も相手にするのは相当大変だぞと覚悟しました。彼らには専門家だからこそのこだわりがいっぱいあるんですよ(笑)。それに一つ一つ応えていくことはとても大変だから、他社はきっとやらない。でも、だからこそそれをウチができるようになったら儲かるだろうな、という確信を持っていました。

ユーザーとメディアと企業のトライアングルハッピーを考える

もう1つはちょっと青臭い話になりますが、自社のビジョンを大事にすることです。「人はいろんな知恵や知識を持っている。その知見を活かしたら、もっとより良い世の中になるんじゃないか」という思いを実現するために、All Aboutは生まれました。これを広告の世界でもやるべきだと思ったんです。

スポンサードサイト広告を導入するときには、かなり揉めました。ガイドはユーザー視点に立って記事を書いているのに、そのガイドサイトを企業に売り渡すとは何事だ――と言われたんです。なぜ私たちがスポンサードサイト広告を作ったのか。それは、当時の世の中には、企業と個人の間に不幸せな関係があったからです。

「企業が言うことは信じられない」「企業は嘘をつく」「企業は商品を売りたいからいいことばかり言う」。こういうイメージを持たれていました。これって悲しくないですか?企業は本来、「世の中をより良くするには1人でやるよりも2人のほうがいい、2人よりも3人のほうがよりたくさん知見が集まるはず……」というところでできているわけですから。

企業は商品やサービスがユーザーや世の中のためになると思ってPRをしている。なのに、こんな不幸せな関係になっていることはすごく残念だと思っていました。企業が持っているノウハウや研究している成果を活かしていけば、きっといい世の中になっていくはずです。企業が独自に育んできた知見に触れれば、世の中の多くの人は驚いたり感動したりするでしょう。そしてそこから、「この会社、すごい!」というリスペクトが生まれる。

こういう理想的な関係が生まれれば、企業側にもユーザーからリスペクトされたいという気持ちがもっと湧いてくるでしょう。そしてそのために努力します。「もっといい商品を作ろう」「もっとためになる研究をしよう」と。これが正のスパイラルになって世の中を良くするんじゃないか、という気持ちは、ガイドサイトも広告も同じなんです。

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最後に、リクルートに古くから伝わるモデルをご紹介して終わりにします。読者と、企業と、メディアの関係です。読者が知らなくて、かつ企業が知っていることがあります。読者はそれを知りたいと思っていて、企業はそれを読者に知ってほしいと思っています。その間をつなげるのがメディアです。

読者がメディアを信頼しており、メディアが読者を集めることができ、企業とユーザーが運営のコストを負担する。この状態を、リクルートでは「トライアングルハッピー」と呼んでいます。リクルートはもはやメディア事業会社ではなくなってきていますが、メディアを作るときにはちゃんと「トライアングルハッピーができているか」を検証していました。新たにメディア事業を始めるときの参考になれば幸いです。

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