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朝の時間の概念を変えた「丸の内朝大学」に学ぶコンセプト構築 ~朝のビジネス街だからこそ成功した市民大学~(2/3)

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常設開催で見直したのは「コンセプト」と「コンテンツの考え方」

参加者からの「声」で、常設の市民大学に

大塚:先ほど、丸の内朝大学の前身ともいえる「朝EXPO」というイベントについて触れていただきました。こちらについて詳しく教えていただけますか?

野田:朝EXPOを何回か開催するうちに、参加者の方から定期・常設開催のお声をいただきました。「一時的で、次はいつあるのか分からないというのはイヤだ」と。参加される方たちは知識や情報だけではなく、「人と人のつながり」も求めているんです。「普段の仕事や家庭では得られないつながりを実現できる場を常設化してほしい」ということでした。私たちはもともと、常設型のコミュニティを意識していたわけではありません。ですが、皆さんが望んでいるのであればぜひやってみようということになった。そこでもう一度コンセプトを見直し、「丸の内朝大学」という形でスタートしたわけです。

常設するのであれば、“自走できる状態”、つまり経済的な面で持続できるやり方を考えなければなりません。多くの市民大学はスポンサーを探して経営を行っているかと思いますが、丸の内朝大学は基本、みなさんの受講料で成り立っています。協賛をいただいている部分もあるのですが、基本的には“自走して回っている組織”といえると思います。そこが、コミュニティとして各方面から評価をいただいているポイントなのかなとも考えています。

丸の内朝大学の経営が受講料で成り立つ理由

大塚:常設化によってしっかりお金を取るようになっても、お客さん(受講生)は付いてきたということですね。

山本:受講生を引きつける上で、重要なのはコンテンツです。丸の内朝大学という箱があって、そこには25個の教室があります。その25個の教室で、どんな授業をしたら面白いのかを考えるわけです。外部から企画を持ち込んでもらうこともあれば、私たちがコンテンツを考えることもあります。授業への関わり方もそれぞれで、「テナント運営」的なクラスもあれば「直下型運営」的なクラスもあります。

野田:こちら側で全体の企画統括はしていますが、クラスごとに主催会社というものがあり、クラスごとに独立採算しているイメージです。丸の内朝大学の事務局は、デパートのイメージに近いでしょうか。事務局はデパート、各クラス主催会社はそこを借りてビジネスをするテナント。両者がコンテンツ主催者として、一緒にクラスをつくっていくというスタイルで取り組んでいます。

大塚:野田さんはコンテンツを企画する際、「自分のやりたいことをやろう」と決めているのですか?それとも「受講生に受けそうだな」というものを考えるのですか?

野田:人によって違うと思いますが、私はやりたいことしかやりません(笑)。

大塚:なるほど。そうなんですか。

野田:そういう発想で考えないと、受講生に刺さらないのです。講師のほうが取り上げるテーマに詳しい、いわば「専門家」なので、その専門家が伝えたいこと、知ってほしいこと、面白いと思うことを取り上げないと楽しくならないと思っています。楽しくならないとどうなるか。クラスの満足度が下がります。受講生に意欲的に取り組んでもらうためには、やはり「講師がやりたいことをやる」のがいいのかなと。

山本:ただ、講師がやりたいことだけを優先してしまうと、コミュニケーションが一方通行になってしまうおそれがあります。その部分のバランスが取れれば、受講生を巻き込んで育てていけるコミュニティがつくりやすくなりますね。

コミュニティビルダーという立ち位置へのこだわり

大塚:丸の内朝大学は、コンテンツプロバイダーではなくコミュニティビルダーという立ち位置です。丸の内は仕事優先のビジネスパーソンが多い街ですが、だからこそコンテンツはあえてビジネス寄りにはしていないんですよね?

野田:はい。「仕事で使える」「金儲けにつながる」というスキルや知識がほしいなら、MBAに行けばいいですよね。ビジネス系のコンテンツでは、「朝大学でないとダメだ」という理由にはならないなと思いました。やはり早朝に来てもらうには、「朝との相性がよいコンテンツ」が重要です。そこで、コンテンツの内容をQOL(生活の質)の向上や社会に役立つという点から考えることにしました。私たちは、「自分にいいこと、社会にいいこと」という言い方をしています。

平日の夜も休日も仕事に取られてしまうような仕事人間は、「個人の幸福」や「社会の平和」を置き去りにしてしまいがちです。もちろん、「仕事人間が悪い」ということではありません。むしろそういった方にこそ、朝という時間を活用して少しでも何か生活の質の向上や社会に役立つ情報を取り入れてもらい、ハッピーになってほしいと考えました。

「ビジネススキル的な要素を極力排除する」というよりは、今お話ししたような観点でコンテンツを考えていったらビジネス的なプロデュースではなくなったという感じです。今の授業にも「編集力講座」や「プロデューサー講座」というビジネススキル習得に近いコンテンツがありますが、そういったものも単純に「仕事に使えますよ」というアプローチではなく、「ご自身にとっても社会にとってもためになりますよ」といった考え方でつくっています。

山本:自分の人生や社会を豊かにする、お金では買えないものを丸の内朝大学では提供したい。それは何かと考えたら、やはり「人とのつながり」だと思うんです。完全につながりが分断されている都市型社会、その代表ともいえる丸の内において、そのつながりを取り戻したいという欲求が受講生の中に根源的にあるのではないでしょうか。

野田:受講生の皆さんはコンテンツに対してお金を払ってくれるので、形だけを見れば私たちはコンテンツプロバイダーです。しかし、コンテンツプロバイダーという立ち位置では「朝大学に来なければ得られないもの」を提供することはできません。講師の方が別の場所で話しても同じような価値を得られるなら、それは「朝大学に来なければ得られないもの」ではありませんからね。場を提供している私たちがやらなければいけないこと、それがコミュニティビルディングでした。

私たちはそこをすごく意識しています。そして意識するだけではなく、いろいろな予算もコミュニティビルディングの観点から考えています。当初から広告費は1円も使わずにここまでやってきました。そこに使うなら、全部コミュニティの運営に使ったほうがいいだろうと。終業式という皆さんが集まれる文化祭のようなもの、あるいはクラス員の懇親会などにお金を使い、コミュニティを強くしていく方向に予算も使っていきたいと思っています。

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