ファンコミプラスTOP > イベント > Webの舞台から教育格差への一撃。「スタディサプリ」のカウンターパンチは届くか(3/3)

Webの舞台から教育格差への一撃。「スタディサプリ」のカウンターパンチは届くか(3/3)

1 2 3

ビッグデータ&AIの取り組みは教育格差を覆せるか

「数II」より「数III」を先に習うほうが効率的?

大塚:教育改革というテーマで無視できないのが、「ビッグデータ」や「AI」の活用です。

松尾:私たちがやりたいことは、先ほど話した現在の一斉授業の個別最適化です。これまではクラスの先生が教壇で40人なら40人に対して一斉に1回だけ話し、それが分かるか分からないかという話でした。そうではなく、フタコブラクダ型の分布が示すように理解度が大きく違う一人ひとりの状況をふまえて、パーソナライズするということですね。

その子が今どういう状態であるのか、ある単元に対して「もう知っている」なのか「付いていけない」のかをビッグデータで把握し、AIを使って「あなたは次にこれを勉強しましょう」とリコメンドしたりサポートしたりできる世界を作りたいなと思っています。この個々に合わせて学習内容を提供する仕組みを「アダプティブ・ラーニング」と言いますが、まさにこれを提供しようと今やっています。

それともうひとつ。これまで教科書や文科省の学習指導要領の中で一直線上にあった単元を、ネットワークに置き換えようとしています。

大塚:数学で言うところの「2次方程式」や「素数」といったものですね。

松尾:はい。これまで一直線上にあった単元をネットワーク化することによって、「この単元が分からないということは、実はこの単元が理解できていない。だからこれを学び直しましょう」といったことが具体的に示せるようになります。最近では、たとえば「数II」の微分・積分を習ってから「数III」で極限を習うよりも、逆から学んだほうがスムーズに理解できる可能性がある、といったことも分かってきているんですよね。こうしたことは数学だけでなく、他の科目でも見え始めています。

「ベテラン先生の経験による学習指導」を成果基準に

大塚:最後に、松尾さんが見据えている未来について一言お願いします。

松尾:これまでは、問題(もしくは類似問題)を繰り返し解くといった反復練習によって、できないところを克服しようとしてきました。私たちはそうではなく、「こちらの単元をもう1回学び直しましょう」といった根本的な提案をできるようにしたいと考えています。そのために、いつ、どの順番で、何を勉強すべきかをサポートできるアルゴリズムの研究も進めています。もちろんまだまだ実験段階ですが、長年のベテラン先生の経験による学習指導を超えられるのかどうかをひとつの基準として取り組んでいきたいですね。

イメージとしては、医療のビッグデータ活用のやり方に近いかもしれません。ゆくゆくは私たちがAIを通して学校の先生に「この子はこういう指導をしたほうがいいですよ」という提案を行い、そこを軸として先生が生徒とコミュニケーションを取って適切なアクションを起こす、といった流れを作れたらいいなと思っています。

大塚:そうなれば、都市部と地方の教育機会に関する格差は今よりも減らすことができるかもしれませんね。

松尾:そうですね。私たちは時々このサービスについて「予備校業界の黒船」といった言い方をされることがあります。「いや違います!」といつも必死に言っているのですが、これは本当に違うんです(笑)。私たちは予備校業界に圧力をかけて開国を迫っているわけではありませんからね。まずは教育の業界に身を置く私たち全員が、「塾や予備校に通っている方が3割ちょっとしかいない」というこの現実に向き合うことが大事だと思います。

大塚:ありがとうございました。

1 2 3