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第5回情報広告研究会レポート

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【講師プロフィール】
滑川海彦
千葉県生まれ。東京大学法学部卒。東京都庁勤務を経てフリーランスとして著述・翻訳業を手掛ける。著書に「ソーシャル・ウェブ入門―Google、mixi、ブログ…新しいWeb世界の歩き方」(技術評論社)など、訳書に「HARD THINGS」、「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」、「フェイスブック 若き天才の野望」、(いずれも高橋信夫と共訳・日経BP)など。2006年からTechCrunch Japanを翻訳。

 
-INDEX-
テーマ:「インターネットとデジタル広告 ~広告はどう変わるのか?~」
■Web業界では顕著になっている二極化
■新しい動きが「黒船」である理由
■トップ15社中14社がアメリカの会社
■インターネットとはどういうものなのか
■メアリー・ミーカーの「お告げ」
■ソーシャル化
■ソーシャルメディア
■モバイルデバイスの拡大

 
テーマ:「インターネットとデジタル広告 ~広告はどう変わるのか?~」
■Web業界では顕著になっている二極化

デジタル広告には、非常に大きな流れが3つあります。1つがクラウド化です。コンテンツが手元にあるのではなく、インターネットの向こう側にある。もう1つがモバイル化ですね。もう1つがソーシャル化。Webビジネスにおいて昔と一番違うのは、サイト運営がものすごくハードルが低くなったということです。昔だと最低でも1億~2億円の資金を用意しないと、会社らしい会社にならない。よく不動産業などでは、テーブルとFAXだけあれば事業を始められるなんて言われていましたが、今はそれどころじゃないわけです。回線一本あればWebビジネスができる。コンピューティングパワーがクラウド側に置かれているので、ますます入口が低くなっています。サーバーやアプリを用意するのに必要な資金や技能はほとんどいりません。何かいい思いつきさえあれば始めることができます。

その流れの一つがプラットフォーム化です。ソーシャルメディアのプラットフォームはけた外れに大きくなっていて、二極化・両極化が起きています。コンテンツが配信できる本格的なプラットフォーム的を作るというのは、ものすごくお金がかかる大変な仕事です。ソーシャルメディア、例えばTwitterやFacebookを見てみると巨大なプラットフォームになってるわけですね。一方で収入も巨大化する。同時にパジャマを着たままタブレットを操れば発信ができちゃう。ほとんどお金がかかってないような発信者といいますか、パブリッシャーも世の中にはたくさんあるわけです。TwitterやFacebookといったプラットフォームには膨大なフォロワーを持っていて、しかし運営にほとんどお金をかけてない人や会社がいっぱいあります。一人企業どころじゃなく、0.1人前企業でもできる。お金のかかる巨大なプラットフォーム化と、お金のかからないマイクロ企業化。どちらも昔は考えられませんでした。プラットフォームは巨大化する。パブリッシャーは分散化するというのが大きなトレンドだと思います。

 
■新しい動きが「黒船」である理由

インターネットとは、「黒船」なんですね。明治維新を考えていただくといいんですけども、明治維新というのはご承知のように、1854年にペリーが来航したところに遡ります。その8年後である1962年には、江戸幕府は崩壊しちゃう。ペリーが来航しなかったらどうなるか?幕府は何十年も続かないにしても、わずか8年で幕府体制がガラリと変わることはありえないわけです。ペリーが来て、開国しろと言った。世界的に見て、歴史の発展というのは地域の内部だけの原因では起こらないのが普通なんですね。外から何かが来て、それに対するリアクションとして、内部が変わっていくというのが普通の流れ。日本のインターネットは特にそうです。

もともとインターネットは、欧州の素粒子研究センターCERNに勤務していたティム・バーナーズ=リーという科学者が発明したわけです。当時のインターネットは、我々が考えていたインターネットとは全然違うものですね。バーナーズ=リーは世界中の科学者が論文などのファイルを共有するためにhttpという通信の仕組みを作りました。コンピューターにgetとかputというコマンドを入れると、その文字列をコンピューターが解析して、ファイル転送動作が起きるわけです。httpプロトコルはインターネットのごく一部ですが、はしょって説明するとそんな感じです。ティム・バーナーズ=リーが作ったのは、基本的には文字列がやりとりできる機能だったんですね。

インターネットはヨーロッパで生まれましたが、我々が見たことのあるインターネット、ブラウザで操作するインターネットになったのはアメリカに来てからです。ブラウザを発明したのは、当時まだ24歳だったマーク・アンドリーセンです。こんな天才はまずいないでしょう。putやgetというコマンドがやりとりできるだけだったインターネットを、グラフィカルインターフェイスと結びつけて、誰でも使えるツールにした。世界最初のブラウザを売る会社を起業して、ネットスケープという会社が誕生しました。ネットスケープはものすごい勢いで大きくなりました。スタートアップの始まりですね。小さなスタートアップ企業がインターネットというものを誰もが使えるものにしたことによって、一夜にしてビリオン・ダラー・カンパニー、10億ドルの企業が生まれた。これは大変だ、インターネットを全部マーク・アンドリーセンに握られると大変だということで、ビル・ゲイツがIE、インターネットエクスプローラーを作ったわけですね。その結果、アンドリーセンのネットスケープは木端微塵にやられちゃうわけですが、同時にインターネット時代も始まりました。

 
 
■トップ15社中14社がアメリカの会社

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この表は時価総額の大きなインターネット会社をランキングしたものです。1995年と2015年それぞれに比較しています。2015年を見てください。上から順にみていくと、Apple、Google、Alibaba、Facebook、Amazon、Twitter…15社のうち4社は中国の会社で、11社は全部USAですね。特にシリコンバレーにある会社が中心です。2015年当時の一番はAppleですが、しばらく前にGoogleが抜いて、今は入れ替わっています。経済大国・日本は一社も載っていません。インターネットは黒船だというのはこういうところにも具体的に表れています。

 
 
■インターネットとはどういうものなのか

昨今では企業広報誌がどんどんオンラインへと移行しています。ただ人間が変わらない以上、コンテンツについては、そうそう新しいものは出てこない。ところがテクノロジーにおいては、新しい構造にがらりと変わることがあるんです。今までのメディアは、「1:n」でした。つまり、全く同じ情報を、多数の人に送っていた。印刷した雑誌を全国で売る。テレビにしてもそうですね。スタジオで撮った映像が、テレビを使って日本中に広がる。広告についてもそうなんです。全く同じものがメディアを通じて数百万、テレビなんか数千万という箇所で流れている。ところが、インターネットが誕生した瞬間に「n:n」になりました。一人ひとりの属性に合わせた情報をそれぞれに送ることができるようになった。ネットとは網のことです。しかも誰もが受け手であると同時に送り手にもなれる。「n:n」の時代になったわけです。つまらない広告だったら受け手側が「つまらない」と言う。「1:n」の時代と比べると、構造が全く違うんです。

 
 
■メアリー・ミーカーの「お告げ」

メアリー・ミーカーはインターネットが始まって以来、インターネットの調査研究をしている人で、モルガンスタンレーのインターネット専門のアナリストだった人です。毎年、「今年のインターネットトレンド」を発表しています。アメリカから見た動きですが、非常に細かくオンライン世界の分析を行なっています。今はモルガンスタンレーを辞めてベンチャーキャピタリストになっています。KPCB、クライナー・パーキンス・コーフィールド・バイヤーズというシリコンバレーでいちばん有名なインターネット・ハイテク系のベンチャーキャピタルですね。そのパートナーとして活躍しています。ミーカーの分析はネットの世界であまりに権威があるので私は半分冗談ですが「お告げ」と呼んでます。こんなお告げをしています。

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これは、非常に分かりやすいグラフなんですが、メディアに接している時間と広告の金額を比較しています。これはデジタル広告が将来どうなるか、今デジタル広告が飽和しているのか否か、伸びるのか否かという点が見えてきますね。メディアは、印刷、ラジオ、テレビ、インターネット、モバイルで比較されています。

テレビのグラフを見ると、テレビを見る時間が減っていて、広告の金額も減っていますね。ここではインターネットとモバイルが比較できるようになってます。インターネットに接する時間はちょっと減っているんですが、広告の金額は増えている。一方で、この図の肝はここなんですけども、モバイルがものすごく増えています。モバイルに接する時間が、1~3年の間に倍々ゲームのように増えましたが、まだ広告の金額は全然追いついていません。非常に大きなギャップがある。

他の例からも分かるように、今後このギャップは必ず埋まっていきます。これは2014年のアメリカの例ですけども、日本においても、2年くらいするとアメリカと同じ状態になります。ソフトバンクの孫さんが、「タイムマシン経営」と言っていたのですが、アメリカでの出来事が1~2年後に日本で起きる。アメリカでどうなるかを良く見て、日本に持ってきたらいい。時期を見計らえば間違いなく勝てる、と。それを「タイムマシン経営」と名付けたんですね。オンライン広告はまさにこのタイムマシンの例だと思います。今後、日本でインターネット広告は増える。しかしモバイル広告はそれ以上に急激に増えます。

 
 
■ソーシャル化

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日本におけるFacebookのユーザーは2500万。Twitterのユーザーは3500万。日本ではTwitterのユーザーがFacebookのユーザーより多いんですね。ですが、3500万、2500万というのは、MAU――マンスリー・スアクティブ・ユーザーを指しています。MAUというのはサービスに登録していて、月1回でもアクセスしたことがある人の数です。ところが、月に1回、チラッと覗くだけでも1人ですし、毎日何時間使っている人も1人としてカウントされます。それでは具合が悪いということで、毎日サービスを見ている人の数、DAU、デイリー・アクティブ・ユーザーが併用されています。

一応登録している人の数をMAUと考えると、MAUを分母にして、DAUを分子にした数が「スティッキー」と呼ばれています。「粘着性」というような意味ですが、非常に翻訳しにくい。スティッキーというのはロイヤリティ、つまり「サービスへの忠誠度」だと言われています。スティッキーを見れば、サービスの成長度合が分かる。上り調子のサービスはスティッキーが高いんです。毎日みんな見に来るわけですから。ところが、あるサイズまで拡大しました、でもみんなが飽きてきました、となるとスティッキーが下がるんですね。MAUというのは、あまり変動がありません。ちょっと面白そうだなと登録したサービスを使ってみて、あんまり面白くないなと思っても、みんなすぐに解約はしませんから。月に1回くらいは、そういえば、という感じでサービスを見に来る。そういうわけでMAUはあまり変わらないんですね。だけど、そういうサービスのDAUを調べてみると大きく落ち込んでいる。あるサービスが調子がいいかどうかは、MAUを見ただけでは分かりません。広告ビジネスでいえば、出稿する媒体の価値を判断するにはスティッキーの変化をみないとだめですね。

ARPU(アベレージ・レベニュー・パー・ユーザー)という指標も重要です。これはアープとかアープーとか読まれることが多いんですが、プラットフォームが稼いでいるかどうか、ビジネスとして成り立っているかどうかという点ですね。それを図るのがARPUです。「レベニュー」というのは面倒な英語で、「インカム」とは全く異なります。「インカム」は利益、「レベニュー」は売上のことを指します。個人、とくにサラリーマンなかは利益も売上も同じケースが多い。ところが会社の場合は、売上を立てるためにはコストがかかります。材料費や人件費などのコストを指し引いた後に残ったものが「インカム」ですから、売上と収益はまるきり違います。

 
 
■ソーシャルメディア

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TwitterもFacebookも、ソーシャルメディアというジャンルになります。ソーシャルというのはもともと、「追う」「フォローする」という意味のラテン語「セクイー」という言葉からきています。「リーダーの後をついていく」というのが「セクイー」で、それが「ソキー」という「ソーシャル」のもとになる言語になった。現在、英語で使われている単語、たとえばsequenceは「順序」、sequelは「続編」、consequence」は「結果をという意味ですね。この言葉の中にある「seq」は「フォローする」という意味が含まれているんです。それを考えるとソーシャルメディアのソーシャルは、そういう意図だったかどうかわかりませんが、上手い命名だなと思います。

TwitterにしてもFacebookにしてもソーシャルの本質とは、自分の興味のある人をフォローして、その人が発信するニュースを見たい、という行為にあります。ソーシャル性が高いかどうかも、サービスの成長度合いを測る一つの指標になります。

ここで難しい問題なのが、Amazonや楽天のようなeコマースのプラットフォームの場合はソーシャルなのだろうか?ということです。個人的な考えで言えば、あれはソーシャルだと思っています。フォローの有無は目には見えないんですけども、Amazonにはレビューがある。Amazonで買い物をするときに、みんなレビューを見るわけです。例えば「製品が汚かった」「3日でダメになりました」「これはいい買い物をした」「買って良かった」といったレビューを見て、買うかどうかを判断する。Amazonは表面的には通販会社に見えますけども、実はレビューというソーシャルな要素があって、それがAmazonというサービスを成長させたんです。

 
 
■モバイルデバイスの拡大

だいぶ以前ですが、「インターネットとモバイルというのは同じことなのですか?」と質問されたことがあります。これは説明が難しいんですね。昔は「1:n」だったのに、今は「n:n」になった。相手を見て、相手に最適なコンテンツを配れるようになった。みんなが同じものを見るんじゃない。「n:n」という双方向のネットワークになったんですね。そういうメディアとしての構造の上からはモバイルもインターネットもまったく同じです。

しかし、テクノロジーでは、インターネットとモバイルは全然違うものです。テクニカルな話は大変難しいのですが、ごく簡単に言うと、ブラウザで見るものとアプリで見るものには大きな差があるという話になります。例えば大きな動画を配信する場合、ブラウザで表示する場合は再生が始まるまで時間がかかる。モバイルだとずっと速い。そういう差がインターネットとモバイルの間には出て来ちゃうんですね。

データを処理して我々人間が見て分かる図や絵にするには、インターネットの場合、ブラウザが処理をします。一方モバイルの場合、アプリがデータを受け取るんですが、表示、つまりレンダリングはデバイスのOSが実行します。これがネーティブ・アプリということの意味です。ネーティブというのはデバイスのハードウェアが処理しますよということです。モバイル・デバイスにはグラフィカルチップが入っているので全力で働くことができるんです。これはほんの一例ですけども他の処理でもだいたいモバイルの方が速い。いつまで経っても表示されなかったり、クラッシュしたりすると、「これは使えない」となる。重大な問題になってしまいます。

一番大きな例はFacebookですね。Facebookは最初、ブラウザ・ベースだったわけです。HTML5が出てきたときに、率先して使ったのはマーク・ザッカーバーグでした。HTML5はどんなブラウザでも同じように表示されるし、誰でも開発できる、素晴らしいものだからと、先頭に立って旗を振っていたんです。ところが1年くらいの間で、180度変わってしまいました。ザッカーバーグがネイティブアプリを作るぞと言い出したとき、はじめは、なぜモバイル化、アプリ化を叫んでいるのかよく分からなかった。でも出てきてみて分かったんです。圧倒的に動作が速いです。実際はごくわずかな差なんですが、この差で使うか使わないかが決まっちゃうんです。使う使わないで何が変わるかというと、広告が変わってくるわけですね。作動が遅いコンテンツは、見る人数が減る。したがって広告もクリックされません。

モバイル化というのはサービスの側からいえばモバイル・アプリ化です。単にデバイスが持ち歩けるようになったというだけではありません。ネイティブアプリになったことで、極端にいえばブラウザに比べると4分の1のサイズのデータを送るだけで、3倍速い動作ができるようになった。つまり12倍の能力向上を実現した。今はモバイル・ブラウザも進歩してそれほどの差ではありません。しかしほんのわずかな能力の差でも、使うか使わないか、クリックするかしないかという問題になり、広告が売れるか売れないかという差が生まれるわけです。アプリ化で先手を打ったザッカーバーグが、ARPUで勝った、ビジネスとして成功したわけですね。

ちなみにこれはメアリー・ミーカーの「インターネットトレンド」にもありますけど、FacebookはTwitterの2倍のレベニューがある。1ユーザーあたりのレベニューが倍もある。つまり圧倒的に体力が違うわけですね。Twitterは評価の高いサービスですが、なかなかレベニューがFacebookに追いつかないんです。この先黒字で運営されていくか、維持できるのか、ということにどうしてもみんな疑いの目が向くわけですね。Twitterは実はビジネスとしてまだ成立してません。個人的にはTwitterはMicrosoftかGoogleかどこか他の巨大メディアか分かりませんが、やはり大きな企業グループの中に入ることになるんではないかと見ています。

簡単にインターネットの構造とソーシャル化、クラウド化、モバイル化というトレンドをビジネスという観点から眺めてみました。時間も限られているのでここまでとしますが、最後に一つ付け加えておくとすると、ネット世界はドッグ・イヤーだという点です。

犬は人間より7倍くらい早く人生が過ぎていく。ITの世界も他の世界と比べると変化というか進歩というか、7倍くらい早く変わるということですね。もちろん人間の本質はそんなに変わるものではありません。しかしテクノロジーは激しく変わる。テクノロジーのエコシステムは広告を含めて激変してきました。これに対応していくことが大事なんだろうと思います。ご清聴ありがとうございました。